映画「すばらしき世界」の原作「身分帳」、あらすじとネタバレ

映画「すばらしき世界」が、2021年2月11日公開予定です!

脚本・監督は、西川美和さん、主演は役所広司さん、深く心にしみる映画と期待せずにはおれません!

この映画は、佐木隆三さんが評論として1991年に第2回伊藤整文学賞を受賞した「身分帳」を原作としていると西川美和さんがおっしゃっていました。

佐木隆三さんといえば、「復讐するは我にあり」で1976年直木賞を受賞された方ですね。ノンフィクションの作品も多く、綿密な取材によって真実を伝えようとする作風は多くの読者をひきつけてきました。

「身分帳」も主人公として書かれている人や周りの人に綿密に取材して書かれたもの。

「身分帳」とは、「収容者身分帳簿」のことで、矯正施設に収容された人のことについて書かれた綴をさしています。

物語は収容施設に13年間入っていた人が、そこを出た後どのように生きたか周りの人達はどのように接してきたかが書かれています。

映画を先に見ても、原作を先に読んでも、キャッチコピーになっている”この世界は生きづらく、あたたかい。”を実感できると思います。

「身分帳」あらすじ

主人公は、刑期を終えて旭川刑務所から出所することになりました。

妻と暮らしている部屋に乗り込んできた男が、日本刀をふりかざしてきたので、それを奪って足を払ったつもりが脇腹を刺してしまったという事件がことの発端でした。

収容されて、不当に扱われていると思うと抗議し、聞いてもらえないといろいろ策を講じていきます。扱いにくい、思想が偏っていると判断され、収容場所が変わっていきます。

出生届が出されておらず、父、母、本籍地は不明。名前さえ明らかではなく、漢字で書くときに書きやすいから、という理由で自分で決めました。

出所の時には身元引受人が必要ですが、弁護士さんが引き受けてくれることになっていました。

身元引受人の弁護士ケースワーカースーパーマーケットの店長、周りの人達は、何かと気にしています。

けれど、周りの人達は当然、自分の生活が優先で、過去のことを知っているだけに、迷惑をかけられるのではないか と監視されているようにも感じてしまいます。

生活の全てを生活保護で賄っていることが心苦しく、早く自分で稼ぎたいと、運転手ならできる と考え、運転免許を取ろうとします。

試験を受けてもうまくいかず、結局、福祉からの支援金、弁護士さんとスーパーの店長からの借金で自動車学校に行き、免許証を手にすることができました。

収入があると生活保護費を削られると考え、周りの人達には内緒でアルバイトをしますが、接触事故を起こし、弁償するように雇用主に言われ、周りの人達に助けてもらうことになります。

ずっと高血圧で、薬を飲んでいます。騒音で眠れなかったら、抗議します。そこでまた、ひと悶着。

社会性がないと言われてしまいます。

そんな時、住まいの退去の話が出て、人生の最初の記憶のある九州で母を探そうと転居することにします。

退去のために渡されたお金で、借金を返し、手続きをして、周りの人達と別れを告げることとなります。

「身分帳」主人公の人となり

野菜が買えない。丸一本は大きすぎ、独り者は持て余す。ラップされたものを買うのは憚られる。

領収書はノートに貼り付けている

銭湯で刺青をジロジロみられるのがいたたまれなく、部屋で体を拭いている。

部屋は、常に片付いている

高血圧症により服薬中

手先は器用

物音に敏感

短歌、俳句

  • 母親は騙し易しという囚友に何の怒りぞ孤児の我
  • 母恋えば侘びしき夜なり雪交じる冬の嵐の重き声鳴る
  • 薄れゆく記憶の底に一つだけ或る日の母の怒り忘れず
  • 初夢の母の言葉の続き欲し

母を思ったものだけでなく、物語の中には秀作があります。自作かどうかもわからない との記述も見えました。

弁護士さんには、堪忍袋の緒が必要と言われていました。けれど、どうにかこうにか運転免許証を手にします。

弱いものいじめを見ると、自分の身も顧みず助けたくなる。その怒りの爆発は味方さえ怖れさせてします。

感想

「身分証」の主人公は、戦後の混乱期に起こったことが発端になって、母を知らずに育ちました。

幼くして、生きていくために靴磨きをし、盗みを働き、食べ物をくれる人の顔色を伺うことを覚えます。善悪より、生かされることを望みます。

そうして、束の間、店を任されたり、結婚生活を送ります。が、収容施設で世間から隔離され、十年以上たってもどってきてから、何とか世間と関わろうとしました。

彼は、収容生活で体がかなり痛んでいましたし、一定の人としか接していませんでした。彼をその時点でしか知り得なかった人達です。

彼は、いつも自分に正直でした。

振り返って今はどう?自分はどう? と問われているようでした。

西川美和さんの理解する「身分帳」を映画「すばらしき世界」で観ることができます。役所広司さんは何を見ているのでしょうか?

答えは映画を観て!

最後まで読んでいただき、ありごとうございました。

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